あなたもできる 国内盤レビューの拘束のドローイング
現代美術家Matthew Barneyの拘束のドローイングという展示会が7月2日金沢21世紀美術館で開催される。
拘束のドローイング(原題 Drawing Restraints)についてあまり資料がないので詳細がわかりにくいのだが、パフォーマンスの概要は『体を不自由な状態で拘束して絵を描く』ということらしい。しかしそれだけのことをこのMatthew Barneyという現代芸術家は何年も行っているという。
金沢まで行けばそれを見れる、だが金沢まで本当に行くのは大変なことだ。アートの世界では高い評価を受けているらしいが、とりあえず大体それがどんなものなのかを知りたい。なぜ彼はそんなことをするのか、本当に興味を持てるものか、まず国内盤レビューも試しに行ってみた。実験が行われたのは日曜日の朝6時。日が昇って気温が上昇する前、スポーツなど体を動かすにはいい時間帯だ。
実験1:
壁倒立しながら絵を描く。
実験の条件:
自宅の部屋で柱に向かって倒立を行う。紙はA4サイズのものを用意し、柱と自分の体の間に置く。利き手である右手にペンを挟み補助用の柱に足を付けて倒立を行う。
結果:
ペンを持ちながら逆立ちをすることはできたが、ドローイングは不可能。カポエイラでも現役でやっていたらできるのだろうか。とにかく片手を床から離そうとしただけでよろめいてしまい紙の上にペンを乗せる事も難しい。
実験2:
三点倒立しながら絵を描く。
実験の条件:
布団の上で三点倒立を行う。最初に立つ場所と頭と手を突く場所の中間に紙を置く。
結果:
倒立を行った後、長く立ち続けるためにバランスを取ろうと足を左右に開いた。その後、右手を離そうとしたところコテンと倒れた。何度か試行したが、ペンを紙に擦りつけるようにして描くのが精一杯で、1回ごとに5cm程度の長さの線がランダムに描かれるだけである。
実験3:
横三点倒立しながら絵を描く。
実験の条件:
マットの上で横三点倒立を行う。紙は最初に立つ場所と頭を突く場所を結んだ線を底辺とした三角形の頂点の位置に配置した。
結果:
横三点倒立を行うために集中するのが精一杯でとても、床から手を離せない。ブレイキングとグラフィティの両立の可能性を探る上で行ってみたが、実験者の技術では困難である。
頭に血が昇るので、何度も倒立を行う場合は小休憩を取った方がよい。僕には難しそうなので、倒立ドローイングはこの時点であきらめることにした。
実験4:
V字腹筋を行いながら絵を描く。
実験の条件:
マットの上で、V字腹筋を行う。紙はバインダーに挟み込んだ。
結果:
弛んだ実験者の腹を引き締める目的も兼ねてV字腹筋が行われた。ドローイングは上体と下体がVの字状に接近する1~2秒の間に行われ、キャラクターの顔の輪郭とヒゲを描くところまで行われた。腹筋に力みがあるせいか線がいつも絵を描く時よりモコモコしているのが自覚された。
V字腹筋をしている視線でデジカメによる撮影を行ったが、室内の光が足らず窓際で何度か撮り直した。取り直すためにさらに何度か腹筋をする形になり、図らずも"拘束のフォトグラフィング"になった。
また前夜からクレープの食べすぎで腹の具合が多少悪かったため、写真撮影後少々経ってから、実験者のお腹がゆるくなりトイレに行きたくなった。
実験5:
腕立て伏せを行いながら絵を描く。
実験の条件:
椅子に足を乗せ、段差を付けた状態で負荷を高め腕立て伏せを行う。紙は腕を曲げた上体で顔に近づく位置に置く。
結果:
片手腕立て伏せの空いている手を使って描くつもりだったが、腕が振れてなかなか自由にならず、キャラクターの目を描くので精一杯。ただしかなり不安定な線で、幼児が描いているようだ。ペンを利き腕ではない左に持ち替え、また挑戦した。すると意外にすんなりと腕立て伏せをしながらキャラクターの鼻と口元、そしてかなり大まかなボディラインを描くことができた。どうやら倒立の際に右手ばかりを使っていたので、利き腕の方は描くのに疲れてしまっていたらしい。しかし左手では自在に描くことはできず、右手よりはいくらかマシという程度。
このレポートを書いている現在7時59分。家族が起きだしてきた。
実験6(最終段階):
背筋運動を行いながら絵を描く。
実験の条件:
机の引き出しの最下部に足の裏を付ける形で下半身を床に固定し、畳の上で背筋運動を行った。紙はバインダーに挟み込んだ。
結果:
背筋運動は上半身を特に使うが、今まで行った実験の中で一番手や腕の自由が効く。実験5で描いたキャラクターの大雑把なボディラインを細めに修正し、手足を書き加えた。多少構図を考え、デモ行進の看板を持たせ「アフリカ」の字を書いた。
総評:
拘束のドローイングは、アートの執行者であるアーティスト本人にとっては新しい表現感覚を会得するための機会であると言えよう。制限を受けることによって自ずと作家としての挑戦心が生まれ、同時にクリエイティヴへの意欲がスタイルを作り上げるエキサイティングな行為であると言える。しかしある程度以上の制限を設けると、ドローイングという表現そのものが全く成り立たなくなるため、「実験を観察する立場」と「実験を行う立場」の互いの集中を欠かないように、このパフォーマンスを行う際は鑑賞者への(距離を置いてしまわないような)配慮も必要であると考える。
以上自家製「拘束のドローイング」を試行してレポートをまとめるまで2時間45分かかった。僕は貴重な時間を使って何をやっているんだろう。アフリカでは食べ物に飢えている子供達がたくさんいるというのに。限られた時間を有効に使い、自己満足のためだけではなく、今後は世界の貧困の問題などに少しでも貢献したい。
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